食品混入異物の分析

食品混入異物は 今 最も関心を持たれているクレームです。

 今、私たちの生活は豊かな食生活が求められる時代にあって、工場では様々な食品が大量生産されています。メーカーではその一つ一つの製品について検査を行い、品質管理には組織的に取り組んでいます。特に、日本のメーカーにおける品質は、世界的にみても水準は高いと言われています。それにも関わらず、その製品に異物が発見されるケースは少なくありません。

 2000年夏、某食品メーカーにおけるクレームがメディアに大きく取りざたされ、社会的問題になりました。これをきっかけに、工業製品である食品に対する消費者の意識が大幅に変化し、より安全で高度な品質を求められるようになったと記憶しています。それまで潜在的に在って見過ごされていた品質障害も顕在化するようになり、特に混入異物については消費者が最も認識し易い品質障害であるため、メーカーに寄せられる混入異物のクレームは非常に多くなっています。

 こうした混入異物の中には、原料の豆の殻であるなどの異物とは言い難いケース、消費者側の過失で混入したとみられるケース等もありますが、やはり消費者に多大な不利益をもたらしかねないケースがあります。そのような場合、メーカーも補償問題や社会風潮で存続すら危うい打撃を受けることになり、決して異物ごときと侮れません。

 メーカーにおける混入異物の防止策は、まず異物が何であるかを特定し、その発生メカニズムや混入経路を調査することから始まります。当社では、高性能な分析機器を用いて異物の成分を解析し、長年培った経験から、その由来や混入経路調査のアドバイスにも応じさせていただきます。

食品混入異物の主要分析装置

【形状、組織の観察】
・ 光学顕微鏡 ・デジタルマイクロスコープ
・走査電子顕微鏡(SEM)
【無機成分の解析】
・ エネルギ分散X線マイクロアナライザ(EDX)
・ 波長分散X線マイクロアナライザ(WDX)
・微小X線回折装置(XRD)
【有機成分の解析】
・ フーリエ変換赤外顕微分光装置(FTIR)
・ 顕微レーザーラマン分光装置(RSS)
・ ガスクロマトグラフ質量分析装置(GCMS)

異物として検出される主な物質

【金属】
鉄鋼 …工程機械の摩耗粉、網や刃物の欠片等
ニッケル、亜鉛 …めっきの剥離片
【プラスチック】
・ PET、PE、PP …容器、包装の破片、繊維等
・ エポキシ、アルキド …接着剤、塗料の剥離片等
【ゴム】
・ SBR、NBR …パッキン、シール材の破片等
【その他】
・ 人為的物質 …毛髪、ふけ、歯冠材等
・ 動植物 …かび、虫、骨等

金属片について

異物は鉄色、針金状の物質でした。検出元素と各々の定量値から、オーステナイト系ステンレス鋼鋼材と判断され、JISに規定されるSUS 304材料に相当するものと判定されます。

異物は金色、切屑状の金属片でした。元素分析の結果、CuとZnから成る合金と判断され、さらに各元素の定量値から、真鍮(黄銅)材料と判定されます。

プラスチック片について

異物は白色のプラスチック片で、赤外分光分析の結果PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂と判定されます。更に元素分析の結果、異物には補強材として多量のガラス繊維(成分;Si,Ca,Al,Mg,O等)が含まれることがわかりました。樹脂成分だけでなく無機添加成分まで解析することで、異物の由来や混入経路を探るための情報量が増します。予想される材料を対照品として同時に分析する場合には、できるだけ多くの情報をもって照合してあげなくてはなりません。

カビの混入について

かびをはじめとする微生物の類は、顕微鏡で観察し、その特徴的な形態から同定します。その成分を赤外分光分析した場合には、ポリアミド化合物(蛋白質)や多価アルコール類が検出されます。これらの物質は動植物の組織を構成する主要成分であり、動植物を原材料とする食品も同様の組成となります。